今日は前回に引き続きハビットリバーサル法(習慣逆転法)のチック症やトゥレット症に特化した記事を詳しくお届けします。
多くのチックは一過性で、時間の経過とともに改善します。
筋肉の痙攣的な収縮がある運動性のチックが1年以上持続する場合は、持続性チックとみなされ、運動性チックに声帯チックも伴う場合はトゥレット症候群と診断されることがあります。
チックやトゥレット症で生活に支障をきたしている場合や年数が経っても改善が見られない時は、ハビットリバーサル法(習慣逆転法)が適しているかもしれません。
まずは医師の診断を受けてみることをおすすめします。
ハビットリバーサル法(習慣逆転法)は、チック管理法であってチックを治すものではありません。
チックの症状に対処できるようトレーニングすることによってチックの症状を軽減し生活の質を向上させます。
まずは気づきのマインドフルネス訓練から始まり、競合反応(拮抗反応・拮抗動作)、応用へと続きます。
1回のセッションで通常1つのチックだけを取り扱います。
最も重症度が強いあるいは生活に支障のあるチックから順に、1つずつ取り上げてトレーニングしていきます。
薬物療法を取り入れている場合は中止せずハビットリバーサル法(習慣逆転法)も両方続けていきましょう。
チック症の治療法としてのハビットリバーサル法(習慣逆転法)
1.マインドフルネス訓練-自分の症状について知る
チックを管理するためには、チックの症状などを認識し、できれば予測できるようにする必要があります。
そのためにまず気づきのマインドフルネス訓練から始めます。また、チックをする前に感じる衝動に慣れるための前段階も兼ねています。
チック症がいつ起こるかを意識し、その時に感じる衝動を特定出来るように練習しましょう。
チックが起こる前の「引き金」となる感覚を認識できるように気付きを深めます。
症状の観察
症状を観察するために鏡を使って詳細をできるだけ詳しく書き出します。チックが起きている時にとっている自分の姿勢も観察しましょう。
内面観察
各回のターゲットとしているチックが発生すると同時に本人が気づくようになるトレーニングに、マインドフルネスを使います。
*子供や注意力に問題がある人はチックの発生をいちいち意識していないことがありマインドフルネス訓練は大変役に立ちます。
マインドフルネス訓練の方法:
チックについて何が起こるか出来るだけ正確に詳しい説明を書き出します。
- ・前駆的衝動、チックが起こるまえに体に起きそうなサインが出ていますか?それはどこですか?どんな特徴がありますか?
- ・チックが現れたら筋肉はどの部分が緊張しますか?違和感などは?出来るだけ詳細に描写しましょう。
- ・どのような衝動を感じ、それはどこから発生していますか?
- ・チックの症状は連続した筋肉の動きで起こります。どの部位から始まりどのような経路で最終的にチックの症状として現れているかを理解するために指導者と話し合っていきます。
- ・チックの衝動が起きた時、チックの症状が出ることによってのみ解消されることがありませんか?
例えば、「緊張」や「圧迫感」などの感覚など - ・チック症が出る前に体の変化がありませんか?
例)顔のほてり、喉の締め付け、肩の緊張など - ・引き金となる感情的なことはありませんでしたか?
いったん引き金となる感情を認識することに成功すれば、その感情に対して別の行動をとることで対応できるようになり、チックに頼らずに緊張を和らげることができるようになります。
2.チック反応を検出する
チック反応を検出する方法
チックに関して詳細を書き出した次はチック反応を検出する段階に入ります。
チックとは関係のない当たり障りのない無害な話題について会話をし、その間にチックが発生したら本人が手を挙げて指導者に知らせます。
利点:
・他に注意を向けている場面でもチック症状の検出スキルが身につく。
・特定の環境だけでなく日常に使えるようにするための練習となる。
次の段階(拮抗反応)に進む基準
チックの発生を少なくとも80%識別できるようになるまで練習を続けます。
将来的にはチックの衝動が識別出来るようになりチックが起こる直前に手を挙げることが出来るようになれば理想的です。
マインドフルネス訓練がうまくいけば、ほぼ毎回、ターゲットとしているチックを予期できるようになっていきます。
注意したいこと:
同意を得ていない相手に対してチックや爪を噛む癖が起きていると指摘するのは相手の自尊心を傷つけることがありますので控えましょう。
3.チック症に対する「競合反応・拮抗反応」を定着させる訓練
チックの自覚が確立されたら、競合反応の訓練の開始です。
習慣的行動を行いたいという衝動と同時に競合反応を行うことが必要であることが分かっています。
本人がチックの衝動に気づいたとき、あるいはチックをすること自体に気づいたときに使えるように学びます。
チック症への競合反応を選択する
競合反応の作成は、下記の条件を満たす反応で、ご本人が実行可能な動作をいくつか提案してもらいます。
・チックと物理的に相容れない動作を選ぶ:競合反応はチックの動作ができないようなものにします。
・どのような場所でも一定の時間(チックの衝動が消失するまで)続けて実行できるもの。
・チックよりも目立たない、そして煩わしくないもの。
・関節を曲げ伸ばししないで筋肉に力を入れる等尺性収縮であること。
競合反応の練習
競合反応を選択したら、チックの衝動を感じたり、チック行動をとったりしたときに、それを使用していきます。
チック症やその衝動が発生したら、衝動が消失するまで競合反応を保持します。
セッション中、チックとは関係のない話をしている間にその時のターゲットとなっているチックが発生するたびに競合反応を行います。
利点:
チックへの衝動の減少と前駆症状に対する慣れ。(訓練していくと競合反応はあまり努力しなくてもよくなり、チックの頻度も少なくなるはずです)
競合反応の定着と応用
競合反応を日常で実践し、セッション以外で活用できるように日々取り入れていきましょう。
また、周囲のサポートは継続に欠かせません。家族や友人にハビットリバーサ法の実践を伝えてあなたに合うような方法で暖かいサポートが受けられるよう相談しましょう。
また下記の方法は応用編としてハビットリバーサ法に加えるとさらに効果が期待できます。
ビジュアライゼーション(競合反応が成功した映像化)の活用:
チックが発生しやすい場所や状況、人を思い浮かべながら競合反応をする自分の姿を心に焼き付け実行しやすくすることや、ビジュアライゼーションで成功体験を先に身に着けます。
ハビットリバーサ法に含めると効果的な対策:
チックがひどくなる特定の場所や環境があるのかなどの状況を把握し、チックが起こりにくくなるように今の習慣を変えていく必要があります。瞑想やストレス管理、今のチックが起こりやすい状況を改善する方法を話し合っていきます。
チック・トゥレット症の拮抗動作/競合反応の例
- 手で叩くチック:手を拳に握りしめる、腕を組むなど
- 自分を打つ癖・肩をすくめる症状:チックの衝動が治まるまで腕を伸ばす
- 肩の痙攣:肘を体幹に押し付けながら腕の筋肉を等尺性収縮(関節を曲げ伸ばししないで力を入れる)させる
- 比較的軽度の目・顔・首の筋肉を主に使う運動チック:リズミカルで本人がコントロールして行う2秒間隔のまばたきが対抗反応となり効果を示した研究結果があります
- 頭をピクピクさせる・頭や首を振るチック:肩と首の筋肉を軽く緊張させ顎を引き下げて胸につけるような気持ちで首の筋肉を緊張させて等尺性収縮させる
- 頭を動かしたり顔をしかめたりするチック:ヨガやストレッチ体操でするような首のストレッチ運動を取り入れてみる
- 声帯チック:口を閉じ、歯を軽く食いしばり、鼻から吸い鼻から出すゆっくりとした深い呼吸を行う
- 口腔内の癖(舌や頬の内側を噛んでしまう):歯を軽く食いしばる
- 唇をすぼめる癖:唇を丸めて口に入れ、前歯を唇に軽く食い込ませる
- 唇が動く:ガムを噛む
- 吃音:話す前に少し息を吐きながら ゆっくりと深い呼吸をする
- 鼻をかむチック:ゆっくり意図的に口から息を吸ったり吐いたりする
競合反応に加えて自分自身になだめるような言葉をかけたり、話す速度を遅くしたりすることも効果的です。
チックを改善する呼吸法
唇を開けて呼吸する重度のチック症に口を閉じて鼻から深く呼吸する方法はチックを改善するための画期的な方法で、副作用や体への害はなく、費用がかからず、即効性のある方法であると言われています。
唇を強く閉じて行う深いスローな鼻呼吸の方法:
唇を強く5秒間押し付けます。
リラックスして、5回繰り返します。舌圧子と呼ばれる器具で唇を強く押し付け、誰かがそれを外そうとするのを5秒間待つ。リラックスして、5回繰り返す。
呼吸法の臨床実験の結果:
トゥレット症候群や慢性チック障害の23~41歳の男性9名、女性1名、合計10名の患者でこの呼吸法を試したところ、実験中は運動性チックと音性チックの頻度は有意に少なく、チックを改善する可能性が期待されるそうです。
ストレス管理とリラクゼーション法
不安や怒りなど強いストレスがきっかけとなり、チックの症状がひどくなることがしばしば見られますが、不安や緊張をチックの発症で心理的に和らげている場合があり、心理的なストレスへの健康的な対処法を学ぶことも大切です。
チックを悪化させるストレス要因を特定し、そのストレス要因をできるだけ回避するための対処法を学ぶと大変効果があると言われています。
リラクゼーション法の例:
身体の特定の部位に順次焦点を当て、まず筋肉を緊張させ、次に弛緩させる。
チック症を減らす催眠療法や誘導瞑想
催眠療法や誘導瞑想でチック症の頻度を減らすことができたケースが海外でありましたので、番外編として方法をお伝えしますね。(こちらは当サロンの他のセラピーでもご提供しています)
催眠療法:
自分が初めてチックを発症した時の自分までさかのぼり、チック反応を起こすのではなく、どうすれば落ち着いていられるかを若い自分に教えるインナーチャイルドケアをする。
誘導瞑想/自分でする場合はイメージ法:
リラックスして下記のイメージをすることで潜在意識に刷り込みをします。
- ・チックを箱に入れ川に流す
- ・チックをコントロールするリモコンのスイッチを切る
- ・チックのボリュームダイヤルがありそれを回す
- ・チックが起こりそうだと思った瞬間、何事もなく過ぎ去りリラックスする自分のイメージ
保護者がお子様に行う場合の注意点
ハビットリバーサル法は簡単そうに見えますが、習慣化したものは脳が関係していますので、すぐには効果を発揮しません。根気と忍耐が必要となります。
大人でもストレス耐性が身についている人は多くなく、ハビットリバーサル法を指導している最中に保護者がイライラしたり、ストレスを感じたりすると子供は自尊心を失い深く傷つきます。
愛情深く、出来なくても忍耐強く遊び心を保ち続けることができる場合のみハビットリバーサル法をお子様にする方が無難でしょう。
感情マネージメントに自信の無い方はプロと相談しながら行いましょう。
チックとトゥレット症を改善するための ハビットリバーサルに関するQ&A
チックを認めて抑えようとするとチックが強くなりませんか?
チックを認め、積極的に管理しようとするとチックが強くなったり、違うチック症状を引き起こしたりするというのはよくある誤解ですが、多くの研究でむしろ、その逆であることを明らかになっています。
声帯チックと運動性チックに関する研究では、声帯チックのみに焦点を当てた治療を行っても、結果として運動性チックが26%減少したことが報告されています。
チックを抑えることとハビットリバーサ法で管理する違いはなんですか?
一時的にならチックを抑えることができますが、常にコントロールできません。また精神的にも抑制はストレスとなり疲れやイライラ、過敏になることがあります。
ハビットリバーサ法はチックの衝動や行動を具体的に管理するスキルを学び、抑制することなくチック症を減少させることができる事に加え、ご本人が症状を制御できるため自信にも繋がります。
競合反応が新しいチックになり替わりませんか?
トゥレット症候群の場合、新しいチックを発症し、古いチックが消えていくことが頻繁に観察され普通のことです。そのためハビットリバーサ法をすることが、新しいチックになるのではないか、新しいチックになり替わったのではないかと心配することがありますが、そのような証拠はありませんし、研究でも観察されていません。
ハビットリバーサ法は現在のチックの悪化やリバウンドをすることがありますか?
ハビットリバーサ法には副作用はないと報告されています。新しいチックや現在のチックの悪化は、ハビットリバーサ法に関係がなく、副作用ではありません。
トゥレット症にハビットリバーサ法の効果はどのくらいありますか?
海外に大規模調査で、受けた人の半数以上が、チックの重症度が大幅に減少し、チックが改善されることが示されています。
ハビットリバーサ法は簡単にできるのですか?
ハビットリバーサ法は簡単な技法や療法に見えるかもしれませんが、効果が実感できるまでには、努力と時間が必要です。他の習い事と同じで慣れてくればより簡単に出来るようになります。
ハビットリバーサ法が適さないケースがありますか?
幼い子供や精神に問題がみられる人、ADHDが未治療の子どもにハビットリバーサル訓練は有効でない可能性があることが研究により示されています。
集中力、衝動性、フラストレーション耐性の問題、そして、子供や障害を持つ人は自分の行動を変えようという意欲が低く、チックの行動に苦痛を感じていないこと、習慣を止めたいという強い気持ちがないためハビットリバーサ法に適さないケースがあります。
子供の場合、保護者はどんなサポートをすれば有益ですか?
ハビットリバーサ法を練習するには集中力と忍耐が必要です。気持ちを高め、やる気を起こさせることはとても大切なサポートとなります。
日常にハビットリバーサ法の練習を支援し、正しく実施した子どもを褒め、また技術を使うことを忘れないよう中立的な態度で優しく思い出させるという大切な役割があります。
チックの軽減ではなく、困難な作業を頑張っている子供の努力を肯定的に認めてあげましょう。
チックが発症していない時に褒め、発症しているときに否定的な態度をとることは決して症状を改善するのに役立ちません。
例えばチックが発症しているときに怒ったり、遊びを取り上げ罰したりするような行為はむしろ悪化する可能性を強めます。チック症を発症していないことを理由にご褒美を与えることも役に立ちません。
子育てに関する記事
チック症の子供を持つ親として何ができますか?
保護者が、しっかりとグラウンディングし、ストレスを管理してリラックスできるよう訓練すると、子供も安心してストレスや不安を軽減するためにどのようにしたらよいかを身をもって学びます。そのためにも保護者自身がストレス耐性を身に着けることをおすすめします。
大人と子供ではハビットリバーサ法に違いがありますか?
子供はチックが発生していることを自覚することが重要な第一歩です。
なぜなら、競合反応は、子どもがチックの発生を自覚しているかどうかにかかっているからです。
一旦、特定のチックに気づくことができれば、競合反応の訓練を始めることができるようになります。
当サロンでセラピーを受けるにあたって
週に1回セッションを受け、10週で8回が目安と言われています。当サロンは気づきのマインドフルネス、呼吸法、ストレス耐性とリラクゼーションスキル、誘導瞑想、インナーチャイルドケア、神経回路の新しい構築などはセッションに取り入れていますが、医学的な資格を持っていないこと、そして、チックやトゥレット症候群のクライアント様からのご依頼はなかったため、結果が保証されていないことをご理解いただき、その上でご一緒に経験を積んでいきながらセラピーをすすめていきたい方のためのセッションをご提供します。
そのなかで症状とストレスの強弱によってエネルギーヒーリングで人体エネルギーを調えることやご本人が自宅でできるストレスを改善するエネルギー療法、ニューロン回路を新しく作るためのエクササイズをクライアント様のご希望によって追加する場合があります。
その場合は回数が増えますが生きる上でポジティブな心の持ち方やストレス管理法を学べますので一生使える大切なスキルが身につきます。
特典:
*ハビットリバーサル法(習慣逆転法)を使うセッションは初めてなので、通常メニューではご提供していないその人に合わせたワークシート作成などの無料教材がつきます。
特典は2022年末までとさせて頂きます。
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