【特別編②】夫婦関係のすれ違いはなぜ起きる? 家族の防衛反応が影響する理由
この記事では、「なぜ夫婦関係で同じすれ違いを繰り返してしまうのか」を、神経系と防衛反応の視点から整理していきます。
前回の記事では、家族の神経系がどのように影響し合い、安心や緊張が連鎖していくのかをお話ししました。今回からは、その仕組みが実際の家庭でどのように表れるのか、具体的なエピソードを通して紐解いていきます。
まずは、夫婦関係の中で起きていた「無意識の防衛反応」が、どのようにすれ違いを生んでいたのかを見ていきましょう。
夫婦喧嘩を繰り返してしまう背景には、幼少期の家庭環境で身についた防衛反応が関係していることがあります。
「妻に怒ってしまう」「夫に頼れない」という悩みも、神経系の緊張パターンとして見つめなおすことで、これまで気づかなかった原因が見えてくることがあります。
- パートナーの一言に、必要以上に反応してしまう
- 頼りたいのに、気を遣って言い出せない
もしどちらか一つでも心当たりがあるなら、今回の記事はきっと役に立つでしょう。この記事では、こうした小さな日常のすれ違いがどのように心の距離を生み、夫婦関係に影響していくのかを、具体的な事例を通して紐解いていきます。
今回の事例は、前回お伝えした「家族の神経系の連鎖」を踏まえると、より理解しやすくなります。
(前回の記事はこちら)
▶ 子育てのイライラが受け継がれる理由と、家族の神経系の仕組み
【事例】夫婦関係で繰り返されていたすれ違い
ここでは、Bさんご夫婦に起きていたすれ違いの背景を見ていきます。
Bさんは念願の家庭を持ち、お子さんにも恵まれました。しかし家の中にいると心が休まらず、妻や子どもに優しくできないことに悩んでいました。
夫・Bさんの悩み
「妻から少し注意されただけで、激しく責められている気がしてカッとなるんです。言い返した後は虚しくなって、何日も心を閉ざしてしまいます……」
幼い頃、Bさんの母親は家庭内で強い影響力を持ち、父親に厳しく接する姿が日常でした。Bさんはその緊張感のある空気の中で育ち、無意識のうちに「女性は自分を脅かす存在」というイメージを身につけていました。
そのため、妻の何気ない一言にも体が反応し、怒りやシャットダウンという形で距離を取ってしまっていたのです。
一方で、Aさんにも「頼れない」という無意識の反応パターンがありました。それは、幼い頃から身についた“助けを求めにくいクセ”だったのです。
妻・Aさんの悩み
「夫に頼りたいけれど、機嫌を損ねるのが怖くて言えません。結局一人で抱え込んでしまい、限界が来ると子どもに八つ当たりしてしまいます……」
Aさんは、人に頼ることが苦手な家庭で育ちました。困ったときに助けを求める感覚が育ちにくかったため、親になった今も「一人で頑張らなきゃ」という反応が先に出てしまいます。
夫にSOSを出す頃にはすでに限界で、言い方がきつくなってしまうこともありました。
ここまでの二人の反応を重ねてみると、すれ違いの正体が浮かび上がってきます。
- Aさんは「自分でやらなきゃ」と抱え込み、限界になってから夫に頼る
- Bさんはその言葉のトゲに、幼い頃の恐怖が刺激されて怒りが湧く
- Aさんは夫の怒りを見て「やっぱり頼れない」とさらに心を閉ざす
二人がいがみ合っていたのではなく、幼少期に身についた防衛反応がすれ違いを生んでいたのです。
もしあなたも、パートナーの何気ない一言で強く傷ついたり、急に怒りが込み上げたりするなら、それは「性格の問題」ではなく、過去に身についた防衛反応が関係しているのかもしれません。
「なぜ人との関係が怖くなるのか」「近づきたいのに距離を取ってしまうのはなぜか」を、愛着トラウマと防衛スタイルの視点から詳しく整理した記事はこちらです。

【ワーク】「拒絶の痛み」は“事実”ではなく“感覚”として扱う
夫婦関係の中で強い怒りや不安が湧くときは、「今起きている出来事」そのものではなく、過去の防衛反応が刺激されている場合があります。
考え方のポイント:
パートナーの言葉に強く反応してしまうときは、「本当に拒絶された」のではなく、過去の傷つきが刺激されて、“拒絶されたように感じる痛み”が強く反応していることがあります。
その反応を「今の現実そのもの」として扱うのではなく、「昔の怖さが一緒に動いているのかもしれない」と見つめ直せると、怒りや不安が少し落ち着きやすくなります。
「責められている!」と決めつける代わりに、「今、自分は責められたように感じているんだな」と言いかえるだけでも、体の緊張がゆるみやすくなります。
このワークは、Bさんのように「相手の言葉に過剰反応してしまう」タイプの方に特に効果的です。過去の記憶が現在の反応を強めていることに気づくと、夫婦の関係性に新しい選択肢が生まれます。
愛したいのに距離を置いてしまう矛盾
Bさんは「家族を大切にしたい」という思いを持ちながら、「近づくと傷つけられるかもしれない」という恐怖も抱えていました。
こうした「近づきたいのに怖い」という矛盾した反応は、愛着の傷つきや幼少期の経験から生まれることもあります。
小さな「安心」の練習から始める
セッションでは、まず「正しく伝えること」よりも、「安心して頼れる感覚」を少しずつ育てていきました。
Aさんが練習した小さな言葉
「少し手伝ってもらえる?」
「今ちょっと余裕がないかも」
「一緒にやってくれると助かる」
Bさんには、「責められた」と感じた瞬間に反応するのではなく、まず自分の体の緊張や怖さに気づく時間を持っていただきました。
こうした小さな積み重ねによって、「戦う」「閉ざす」以外の関わり方が、少しずつ家族の中に増えていきました。
紐解かれた「怖さ」の記憶
「妻に怒っていたんじゃない。本当は、子どもの頃、お母さんが怖くてたまらなかったんだ……」
Bさんは、妻の姿に幼い頃の自分を重ねていたことに気づきました。怒りの奥には、子どもの頃に感じていた怖さや無力感が、そのまま残っていたのです。
怒りの奥の別の感情
多くの場合、それは「怖さ」「悲しさ」「無力感」といった、幼い頃に十分に扱えなかった感情です。大人になった今も、その未処理の感情が刺激されると、怒りという形で表に出てしまうことがあります。
思い込みが解けた瞬間、肩の荷が下りていく
Bさんの心の奥には「自分は愛されない存在だ」という思い込みがありました。しかし、母親の厳しさは母親自身の余裕のなさによるもので、自分の価値とは関係がなかったと理解できたとき、長年の緊張がふっと緩んでいきました。
ファミリーヒーリングがもたらした変化
幼い頃の防衛反応が自分の反応を左右していたと気づいたことで、Bさんは妻に対して過剰に怒ったり、心を閉ざしたりすることが減っていきました。
Aさんに「何か手伝えることはある?」と声をかけられるようになり、Aさんも安心して心を開けるようになりました。
まだ壁を感じる瞬間はあるものの、二人は確かに距離が縮まっていると実感しています。
あなたの代で、家族の「見えない鎖」を終わりにしませんか?
今回の夫婦の事例に共通しているのは、誰も悪くないということです。すれ違いは、心の問題というよりも、幼い頃に身につけた「自分を守るための反応」が今も懸命に働いているだけなのです。
その反応に気づき、優しくほどいていくことができれば、夫婦関係や家族の関係性は少しずつ変わっていきます。
特別編シリーズのご案内
- 【特別編①】子育てのイライラが受け継がれる理由と、家族の神経系の仕組み
- 【特別編②】夫婦関係のすれ違いと防衛反応(この記事)
- 【特別編③】思春期の息子との「見えない壁」の正体(次回公開)
- 【特別編④】引きこもる子どもを前に、母親が抱えていた無力感(次々回公開)
体験セッションのご案内
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