【執筆】Yayoi(サロン「みか月と三ツ星」主宰)
不安や生きづらさを抱える方へ、16年間エネルギーヒーリングと心理・神経系のワークを提供しています。(兵庫県たつの市 / 全国オンライン対応)
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「どうして私は、いつも悪い方に考えてしまうんだろう」
「頭では気にしすぎかなと分かっているのに、気づくと同じことを考えてしまう」
そんな経験はありませんか?
私たちは、ある出来事が起きたとき、その考えが本当かどうかを確認する前に、瞬間的に浮かんだ考えをそのまま事実として受け取ってしまうことがあります。
例えば、日々の生活の中でこんな考えが浮かぶことはないでしょうか。
- 「すれ違った知人が目を合わせてくれなかった。避けられているのかもしれない……」
- 「評価で少しでも悪いことが書かれていると、自分は本当に無能だと落ち込んでしまう……」
- 「楽しそうな輪の中にいるのに、みんな無理して自分に合わせてくれている気がする……」
認知行動療法(CBT)では、このようにある状況に対して、瞬間的に自動で浮かんでくる考えを「自動思考」と呼びます。
自動思考は特別な人だけに起こるものではなく、誰にでも起こる自然な心の働きです。
しかし、セッション現場でも「気にするほどでもないと頭では分かっているのに止められない」というご相談を受けることがあります。その思考が浮かんだ瞬間、動悸がしたり、呼吸が止まったりすると、浮かんだ考えがまるで事実のように感じられてしまうことがあるからです。
また、その考えを事実だと受け取ったままにしていると、不安や落ち込みなどの感情が強くなったり、その後の行動に影響したりする原因になっているかもしれません。
この記事では、自動思考とは何なのか、なぜ同じ出来事でも人によって浮かぶ考えが違うのか、自動思考に気づくにはどうすればよいのかを具体例とともに解説します。
認知行動療法(CBT)について
認知行動療法(CBT)は、自分の考え方や行動のパターンに気づき、こころの負担を軽くしていくことを目指す心理療法のひとつです。この記事で紹介する「自動思考」も、認知行動療法で大切にされている考え方のひとつです。
認知行動療法やこころの健康についてさらに詳しく知りたい方は、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所が運営する「こころの情報サイト」も参考にしてください。
自動思考とは?
自動思考とは、認知行動療法(CBT)で用いられる概念の一つで、ある出来事や状況に対して、意識的に考えようとする前に、瞬間的・自発的に浮かんでくる具体的な考えのことです。
私たちは、起きた出来事をそのまま受け取っているとは限りません。出来事に対して「どういうことだろう」「自分に関係があるのかな」など、何らかの解釈や意味づけをしています。
その中でも、瞬間的に浮かんでくる考えが自動思考です。
たとえば、職場の飲み会や、友人グループの集まりに参加しているときの一コマを考えてみましょう。
周りからは「いつも明るくて社交的な人」と思われていて、自分でも場を盛り上げようと笑顔で振る舞っているのに、なぜか内心では緊張が続き、強い疲労感を覚えることがあります。
そのとき、自分では「なぜこんなに疲れるんだろう」としか分からなくても、頭の中では次のような考えが瞬間的に浮かんでいるかもしれません。
- 「今の私の笑い方、不自然じゃなかったかな?」
- 「あの人が一瞬時計を見たのは、私の話がつまらないからかもしれない」
- 「みんなに良い人、おもしろい人と思われていないと、ここにいてはいけない気がする」
- 「次に何を話せばいいんだろう……沈黙になったら、気まずくなってしまう」
このように、周囲のちょっとした表情や仕草をきっかけに、自分についての考えや、この先起こることへの予測が瞬間的に浮かぶことがあります。
そして、その考えを事実として受け取ることで、さらに緊張したり、不安になったり、その場で無理に話し続けようとしたりすることもあります。
このように、出来事や状況に対して自動的に浮かんでくる具体的な考えが自動思考です。
自動思考は、必ずしもネガティブなものとは限りません。ポジティブな考えや中立的な考えが浮かぶこともあります。
また、自動思考かどうかを考えるとき、その考えが事実か、正しいか、間違っているかは問いません。
大切なのは、「その状況で、自分の頭にどんな考えが浮かんだのか」に気づくことです。
たとえば、「あの人は私を嫌っている」という考えが浮かんだとしても、それが必ずしも間違いとは限りません。実際に相手との間に何らかの出来事があり、そう考えるだけの理由がある場合もあります。
それでも、その考えがある状況をきっかけに瞬間的に浮かんできたのであれば、自動思考として捉えることができます。
自動思考に気づくことは、「その考えは間違っている」と否定することではありません。まずは自分がどのように状況を受け取り、何を考えたのかを知ることから始まります。
自動思考を理解するポイント
出来事・状況 → 自動思考 → 感情・行動などの反応
たとえば、「あの人が時計を見た」という出来事に対して、「私の話がつまらないのかもしれない」と考えたとします。
ここで大切なのは、その考えが事実かどうかをすぐに判断することではありません。まずは「そのとき、自分の頭にはどんな考えが浮かんだのか」に気づくことです。
自動思考は誰にでも起こる
自動思考という言葉から、「自動で考えてしまうのは悪いことなのでは?」と思うかもしれません。
しかし、自動思考そのものは悪いものではありません。
私たちは日常生活の中で、膨大な情報を受け取りながら生活しています。そのすべてについて、一つひとつ意識的に考えていたら、とても追いつきません。
そこで、これまでの経験や学習などをもとに、状況をすばやく判断することがあります。
その結果として、ある出来事に対して瞬間的に「こういうことだろう」と考えが浮かぶことがあります。
たとえば、初めて訪れた店で店員さんが「こちらへどうぞ」と手で示したとき、これまでの経験から「この席に座ればいいんだな」と自然に判断することができます。
このように、私たちは一つひとつを意識的に考えなくても、これまでの経験や知識をもとに、目の前の状況をすばやく理解しています。
問題になるのは、自動的に浮かんだ考えを「事実そのもの」だと思い込み、自分を苦しめる反応につながっている場合です。
同じ出来事でも、感じ方が違うのはなぜ?自動思考の仕組み
同じ出来事でも、浮かぶ自動思考は違う
自動思考を理解するうえで大切なのが、出来事と、それに対する自分の反応は同じではないということです。
たとえば、「メールの返信がない」という出来事を考えてみましょう。
同じ出来事:「メールを送ったけれど返信がない」
Aさん
「忙しいのかな」
→ 特に気にせず、そのまま過ごす。
Bさん
「何か気に障ることを言ったのかもしれない」
→ 自分の言動を何度も振り返る。
Cさん
「返信しないなんて、私を軽視しているの?」
→ 腹が立ってくる。
Dさん
「嫌われたのかもしれない」
→ 不安になり、何度もスマートフォンを確認する。
このように、同じ「返信がない」という出来事でも、そのときに浮かぶ考えによって、感じ方や行動が変わることがあります。
たとえば「上司から『あとで少し話がある』と言われた」という場面を想像してみてください。
同じ出来事:「上司から『あとで少し話がある』と言われた」
Aさん
「何か重大な失敗をしただろうか…」
→ 『怒られる』という自動思考が浮かび、不安になる。
Bさん
「新しいプロジェクトの件かな?」
→ 『期待されている』という自動思考が浮かび、ワクワクする。
Cさん
「また話が長くなりそうだな…」
→ 『時間を取られる』という自動思考が浮かび、面倒くさく感じる。
Dさん
「何かあったっけ…?」
→ 特に強い感情は湧かず、『必要な業務連絡だろう』と淡々と受け止める。
Eさん
「頭が真っ白になって動けない…」
→ 『何か大変なことが起きた』と身体がこわばり、思考がフリーズする。
このように、同じ「上司からの呼びかけ」という出来事でも、その瞬間に通過する自動思考によって、生まれる感情や身体の反応が全く違ったものになります。
もちろん、実際には感情が一つの考えだけから生じるとは限りません。過去の経験や、そのときの心身の状態、人間関係など、さまざまな要素が関係しています。
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自動思考は「事実」ではなく「解釈」のことがある
ここがとても大切なポイントです。「頭の中に浮かんだ考え」と「客観的な事実」はイコールではありません。
先ほどの「知人に挨拶したのに目を合わせてくれなかった」という例で言えば、
- 事実:知人が目を合わせずに通り過ぎた
- 自動思考(解釈):私は嫌われている、避けられている
実際には、相手はただ考え事をしていて気づかなかっただけかもしれません。しかし、浮かんだ考えを「事実」のように受け取ってしまうと、不安や悲しみなどの感情が強くなることがあります。
このように自動思考で瞬間的に浮かんだ考えを、そのまま事実として受け取ってしまうことがあることを知っておくことも大切です。
メールの返信がないという例では、返信がないという事実だけでは、相手が何を考えているのかは分かりません。
それでも、
- 「嫌われた」
- 「怒っている」
- 「軽視されている」
- 「自分が悪い」
といった考えが浮かんだら、
これらは、出来事に対する自分なりの解釈と言えるでしょう。
「事実」と「自分の解釈」を分けてみる
自動思考に気づくときは、次のように分けて考えてみると分かりやすくなります。
事実:メールを送ったが、まだ返信がない。
自動思考:「嫌われたのかもしれない」
この2つを分けてみるだけでも、「自分は今、こう解釈しているんだ」と気づきやすくなります。
自動思考と「考え方のクセ」の関係
同じような出来事が起こるたびに、似た考えが浮かぶことがありませんか。
たとえば、誰かの表情が少し曇っているだけで、
「私、何か悪いことをしたかな」と考えてしまう。
仕事で小さなミスをすると、
「上司からの信頼を失った」と考えてしまう。
このように、似た状況で似た考えが浮かびやすい場合、その背景には考え方のクセが関係していることがあります。
過去の経験や育った環境などを通じて、ものの受け取り方や考え方のパターンが身につくと、それに影響されて似た自動思考が浮かびやすくなることがあります。
ただし、すべての自動思考が「認知のゆがみ」であるわけではありません。
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こんなとき、自動思考が浮かんでいるかもしれません
自動思考はあまりにも速く浮かぶため、意識しなければその存在に気づきにくいものです。
特に、感情が大きく動いたときは、その直前にどんな考えが浮かんでいたのかを振り返ることで、自動思考に気づきやすくなります。
自動思考に気づくきっかけになりやすい場面
- 急に不安になったとき
- 必要以上に落ち込んだとき
- 誰かの言葉に強く傷ついたとき
- 怒りが急に湧いてきたとき
- 「どうせ無理」と思ったとき
- 人から褒められても素直に受け取れないとき
- 同じことを何度も頭の中で繰り返しているとき
たとえば、「少し相談があるんだけど」と言われたとします。
その瞬間に、
「何か気の触ることをした?」
「やっかいな問題がおきたの?」
と考えたとしたら、それが自動思考かもしれません。
まだ「何について話すのか」は分かっていないのに、頭の中ではすでに悪い展開が始まっているのです。
自動思考に気づく方法
自動思考は瞬間的に浮かぶため、「考えを探そう」としても、なかなか思い出せないことがあります。
そんなときは、考えそのものを探すのではなく、自分の反応が強くなった場面から逆にたどってみると、自動思考に気づきやすくなります。
① 感情や身体の反応が動いた場面を思い出す
まずは、強く気になったり、急に緊張したり、気持ちが沈んだりした場面を思い出してみましょう。
たとえば、次のような出来事です。
- 「自分が部屋(休憩室や会議室)に入った瞬間、それまで盛り上がっていた会話が一瞬フッと途切れた」
- 「何気ない雑談の最中、相手がほんの一瞬だけ、困ったような、あるいは引きつったような表情を見せた」
- 「複数人で話しているとき、自分以外のメンバーの間だけで目配せ(視線のやり取り)があったように見えた」
- 「自分が良かれと思って提案したことに対して、周囲が『あ、うん……そうだね』と微妙なリアクションをした」
- 「普段はよく話しかけてくれる同僚が、今日はなぜか話しかけてこず、少し距離を置かれているように感じた」
ここでは、まず「実際に何が起きたのか」と「自分がどう受け取ったのか」を分けて考えてみましょう。
② そのときの感情や身体の反応に気づく
次に、その出来事が起きたとき、自分にどのような反応が起こったのかを見てみます。
「不安になった」
「恥ずかしくなった」
「急に緊張した」
「胸がざわついた」
「その場から離れたくなった」
など、できるだけ具体的にしてみましょう。
長年のセッション経験から、思考よりも先に「身体の違和感」に気づく方もいると感じています。身体にどんな反応が起きているのかにも、優しく気づいてあげましょう。
③ その瞬間に浮かんだ考えを探す
最後に、「その瞬間、頭の中で何と言っていた?」と自分に問いかけてみます。
たとえば、先ほどの出来事から、
「私のことを話していたのかもしれない」
「今の表情、私の話が嫌だったのかな」
「みんな私には言えないことがあるのかもしれない」
「私の提案、変だったのかな」
「今日は私と話したくないのかもしれない」
などの考えが瞬間的に浮かんでいたとします。
こうした、「私は迷惑をかけている」「どうせ私なんて」といった、心のつぶやき(自動思考)が浮き彫りになってきます。
自動思考を見つける簡単な順番
出来事 → 感情・身体の反応 → そのとき浮かんだ考え
「何が起きた?」
↓
「どう感じた?身体にどんな反応があった?」
↓
「その瞬間、何を考えた?」
この順番で振り返ると、自分では見落としていた自動思考に気づきやすくなります。
自動思考に気づくと、考えとの距離が変わる
自動思考に気づくと何が変わる?
自動思考に気づくことの大きな意味は、「浮かんだ考え」と「事実」を少し離して見られるようになることです。
たとえば、「嫌われたかもしれない」という考えが浮かんだとき、これまではその考えをそのまま信じて、不安になっていたかもしれません。
しかし、自動思考というものを知っていると、
「今、私は『嫌われたかもしれない』と考えているんだな」
と、一歩引いて眺めることができます。
これまでは「思考=事実」として飲み込まれていたのが、「あ、今自分はこう考えているんだな」と、一歩引いて客観的に眺められるようになっていきます。
自動思考に気づくことで起きた変化
ここでは、セッションで実際にあったご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一部一般化した、変化の一例をご紹介します。
ご相談内容
「上司やパートナーが不機嫌なとき、つい『私が何か怒らせるようなことをしたのかな』と不安になり、必死に機嫌をとったり、顔色を伺ったりしてヘトヘトになってしまいます。職場が変わっても同じパターンになってしまいます。私の何がいけないのでしょうか」
その後、この方は自動思考について知り、そのとき自分の頭に浮かんでいた考えに気づけるようになることで、少しずつ変化していきました。
「私が何かしたから相手が怒っている」という考えと、実際に起きていることを少しずつ切り分けられるようになり、「あの人なりの理由があって、今はただ虫の居所が悪いだけなのかもしれない」と、一歩引いて考えられるようになりました。
不安がまったくなくなったわけではありません。それでも、不安を感じたからといって、その不安が現実なのかを確かめるために、相手の顔色を伺い続けることが減っていきました。
そして、不安の度合いも少しずつ変わっていきました。
自動思考に気づいた後に大切なこと
自動思考を無理に消そうとしなくていい
自分の自動思考について気づくと、「ネガティブな自動思考をなくしたい」と思うかもしれません。
しかし、考えは自分の意思だけで完全にコントロールできるものではありません。
長年身についた思考のパターンを無理に押し込めようとすると、かえって心が疲れてしまうことがあります。
「消す」のではなく、「ただ気づいて、横に置いておく」だけで十分です。
そして、必要に応じて、「本当にそうなのかな?」「他の見方もあるのかな?」と、少しずつ考えを見直していくことができます。
マイナス思考そのものについて、なぜ悪い方に考えてしまうのか、その背景や向き合い方を詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
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自動思考に気づくことは、自分を責めることではない
自動思考を探すワークをしていると、「またこんなネガティブなことを考えてしまった…」と自分を責めてしまう方がいます。
しかし、自動思考に気づく目的は、自分を反省することではありません。
「長年、こうやって一生懸命自分を守ろうとしてきたんだな」と、自分の心の癖を温かく理解してあげるためのプロセスです。
自分の反応を責めるのではなく、その背景を知っていくことで、自分との付き合い方も少しずつ変わっていきます。
まとめ|自動思考に気づくと心との付き合い方が変わる
自動思考に気づくことは、考えを無理にポジティブに変えることではありません。
「今、自分はこんなふうに考えている」と気づき、考えと少し距離をとれるようになることで、感情や行動の選択肢が増えていきます。
長年身についた考え方のクセは、気づいたからといってすぐに変わるものではありません。しかし、自分の中でどんな自動思考が起きているのかを知ることは、そのクセに振り回されないための第一歩になります。
もし一人で自分の思考を整理することが難しいと感じるなら、誰かと一緒に振り返ってみるのも一つの方法です。
当サロンでは、今どのような場面で心が反応するのか、そこにどんな考えが浮かんでいるのかを一緒に丁寧に見ていきます。自分では気づきにくかった思考のパターンを整理し、少しずつ自分自身への理解を深めていくためのサポートを行っています。
「どうして私は、いつもこんなふうに考えてしまうんだろう」と感じている方も、まずは自分を責めるのではなく、その瞬間に浮かんだ考えに気づくところから始めてみてください。
当サロンの対人支援は医療行為ではありませんので、強い不安や抑うつ状態などが続いている場合や、日常生活に大きな支障が出ている場合には、医療機関や心理職などの専門家への相談を優先してください。

