トラウマ回復と認知療法|理解と感情のギャップを埋めるセルフケア

トラウマと認知療法のセルフケアをイメージしたイラスト(胸に手を当てて落ち着きを感じる人物)
潜在意識のパターンをやさしく整えるヒント

はじめに(トラウマ・感情反応・回復プロセスの概要)

思考と感情は必ずしも一致しません。ジェットコースターに乗って「安全だ」と分かっていても怖い、メールの返信が来なくて「相手にも事情がある」と分かっていても不安になることは多くの人が経験します。

過去のトラウマ体験は、この「理解」と「感情」のズレを大きくし、否定的な思い込みを強めてしまいます。「自分には価値がない」「もっと頑張らなければ愛されない」などの固定観念が潜在意識に根づき、自己否定や不安を強めてしまうのです。

しかし、認知療法の考え方をセルフケアに取り入れることで、こうした思い込みを少しずつ見直し、心の安心感を取り戻すことができます。

セラピー経験によって異なるつまずき方と“心のクセ”の特徴

セラピー経験が長い方の中には、「自分は愛されるに値しない」という強い信念を持ち、頭では「そんなことはない」と理解していても、その感覚を手放せず苦しむケースがあります。

これは、理性としての理解と、身体や感情に刻まれた信念が別の層で働くためです。トラウマは多くの場合、「認知のレベル」よりも「感情記憶・身体反応のレベル」に残るからです。

私たちの脳では、「理解」は前頭前野が行いますが、「感情」や「恐怖記憶」は扁桃体や身体反応に保存されます。そのため、いくら頭で「私は大丈夫」と理解しても、感情のほうが過去に固定されたままだと、認知と情動の矛盾が生まれ苦しみが続きます。

例えば、

  • 頭では「私は大切にされていい」と分かっている
  • しかし、相手の反応が少し薄いだけで「嫌われたかもしれない」と感じてしまう

このように、理解していることと感じてしまうことにギャップが生まれます。この二重構造が、セラピーを続けても「なぜ変われないのか」と悩みやすい大きな要因になっています。

一方、セラピー経験が少ない方は、自分の内側にどんな信念やイメージがあるかに気づいていないことが多く、「なぜ不安なのか」「なぜ動けないのか」が分からない状態に陥りやすい傾向があります。

なぜこのギャップが苦しみになるのか|トラウマの情動記憶と認知の不一致

頭の理解と感情の信念がズレる理由(認知と情動記憶)

トラウマは「感情」や「身体反応」の領域に強く刻まれます。

  • 理性:私は愛されてもいいはずだ
  • 感情・身体:あなたには価値がない

という二つが同時に作動します。この二重構造によって、「理解しているのに治らない」と感じるようになります。

知識では変わらない感情の信念(トラウマによる心のクセ)

セラピー経験が長い方ほど、心理学的な知識や自己理解が深い傾向があります。しかし、以下のような経験が感情記憶として残るため、理解だけでは書き換わりません。

  • 幼少期の愛情飢餓
  • 親との関わりで形成されたパターン
  • 見捨てられた経験
  • 否定的な言葉や態度の蓄積

こうした体験は潜在意識のレベルに印象として刻まれ、理解では追いつかない「感覚としての信念」を形成します。

古いトラウマ信念が再活性化する理由(環境刺激と神経系)

日常の小さな出来事が、過去の傷を刺激して古い信念をよみがえらせることがあります。

  • LINEの返信が少し遅い
  • 仕事で注意された
  • 相手の表情が曇って見えた

嫌われた

自分には価値がない

また失敗した

といった感情が自動的に浮上します。理性では「そんなはずはない」と分かっていても、感情は反応してしまい、内部に矛盾が生まれます。

セルフケアに活かせる認知療法(ネガティブ信念の仕組みと書き換え)

過去の出来事を変えることはできませんが、その出来事にどのように意味づけし、どのように行動を選択するかは変えられます。そこで役立つのが認知療法(CBT)です。

認知療法の基本ステップ

  1. 自動思考に気づく:瞬間的に浮かぶ「また嫌われたかも」などの思考をキャッチする
  2. 思考のクセを把握する:「白黒思考」「先読み」「自己否定」などを整理する
  3. 現実的な視点で問い直す:「本当にそうだろうか?」「他の可能性は?」と見直す
  4. 小さな行動を変えてみる:新しい視点に基づいた行動を試してみる

よくあるネガティブな自己イメージと背景

  • 愛される価値がない
    • 背景:条件付きの愛情、承認不足
    • 状況:恋愛や対人関係で不安が強まる場面
    • 反応:焦り、過剰適応、自己否定
  • 人は信用できない
    • 背景:裏切りや暴力、信頼の崩壊経験
    • 状況:新しい人間関係で警戒心が出る
    • 反応:防衛、疑念、孤立感
  • 自己否定感が強い
    • 背景:失敗体験の積み重ね、褒められ経験の少なさ
    • 状況:成果が認められなかったとき
    • 反応:落ち込み、無力感、諦め
  • 私は弱いからダメだ
    • 背景:トラウマによる無力感、強さへの過度な要求
    • 状況:責任や課題がのしかかるとき
    • 反応:焦り、逃避、抑うつ
  • どうせ失敗する
    • 背景:過去の失敗の刷り込み
    • 状況:新しい挑戦に直面したとき
    • 反応:不安、回避、意欲低下

トラウマ・不安に効くセルフケアでできること

  • ジャーナリング:否定的な観念を書き出し、事実と思い込みを分ける
  • アファメーション:肯定的な言葉を繰り返し、潜在意識に浸透させる
  • イメージワーク:安心できる場面を思い浮かべ、心の安全基地を作る
  • 呼吸法・瞑想:心身を落ち着け、安心感を日常に定着させる

トラウマ回復のための1週間セルフケア実践例

  1. 否定的な観念を3つ書き出す
  2. 観念に対する肯定的な言葉(アファメーション)を作る
  3. 安心できる場面をイメージし、心の安全基地を描く
  4. 深い呼吸や簡単な瞑想を5分取り入れる
  5. その日の小さな成功体験を1つ思い出す
  6. 信頼できる人と短いコミュニケーションを取る
  7. 1週間の振り返りをジャーナリングして気づきを整理する

最終まとめ:トラウマ回復のポイント

トラウマからの回復とは、ネガティブな感情がゼロになることではありません。揺れ動く感情があっても、

  • 安心できる自分の部分とつながれること
  • 不安や恐怖を落ち着かせるスキルを使えること
  • 「今の自分は大丈夫だ」と感じられる瞬間が増えること

これらが本当の回復のサインです。

トラウマ体験は心に否定的な思い込みを刻み、自己否定や不安を強めます。しかし、認知療法の考え方をセルフケアに取り入れることで、こうした固定観念を少しずつ見直し、安心感と自己価値を取り戻すことができます。

あなたの傷ついた心は、一人で抱え続けなくても大丈夫です。小さなステップを積み重ねることで、必ず「安心できる瞬間」が増えていきます。

ぜひ、こう自分に優しく声をかけてみてください。

「今の私で大丈夫」
「安心して心を休めていい」

今日から少しずつ、あなた自身の安全基地が育っていきます。あなたの心が、確かな希望に向かって進んでいきますように。

【トラウマ4回シリーズ – 関連記事】

第1回:トラウマとは?神経系から読み解く心の傷とトラウマセルフチェック
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第2回:人とのつながりが怖いあなたへ|愛着トラウマと防衛スタイルから見る心の回復
https://healing33.com/trauma-series-relationship/

第3回:心の痛みと身体症状がつながる理由
https://healing33.com/trauma-series-pain/

当サロンでは、エネルギーヒーリングとカウンセリングを通じて、潜在意識に刻まれたネガティブな自己イメージをゆるめ、本来の生命力を取り戻すサポートをしています。
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米国BBHS卒・4年間の専門課程修了ヒーラー
心理・スピリチュアル分野の専門家
Yayoi(バーバラ・ブレナン・ヒーリング認定)

米国フロリダ州のバーバラ・ブレナン・スクール・オブ・ヒーリングで4年間学んだエネルギーヒーリングを土台に、身体感覚のワークやパーツワークを取り入れたセッションを行っています。必要に応じて呼吸法も併用し、心身の安心や「生きやすさ」を取り戻すサポートを大切にしています。
開業12年、スクール在籍時から数えると16年間、個人セッションに携わってきました。現在も、海外の専門的なオンライン講座を通じて心理・神経系の学びを継続しています。
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