何も感じない・感情がわからないのはなぜ?心理学で読み解く“心が動かなくなる仕組み”
結論からお伝えすると、感情がわからない状態は、強いストレスや緊張が続くことで
「感情を意味づける回路」が弱まり、身体の反応だけが先に出てしまうことが原因です。
これは異常ではなく、心があなたを守ろうとする自然な反応です。
「嬉しいのか悲しいのか、自分でもよくわからない」
「何も感じていない気がする」
「感情の話になると、自分だけ置いていかれるように感じる」
こうした悩みは近年とても増えています。「感情がわからない」「何も感じない」「不安がわからない」といった検索ワードは年々伸びており、多くの人が同じテーマで悩んでいることがわかります。
感情がわからなくなるのは、性格の問題でも、心が壊れてしまったわけでもありません。心理学や神経科学の研究では、強いストレスや緊張状態が続くと、感情の自覚が難しくなることが確認されています。これは「アレキシサイミア(失感情症)」と呼ばれる傾向とも関連があります。医学的な診断名というより、“感情を言語化しにくい傾向”を指す言葉として使われることが多いものです。
この記事は、感情の理解を深めるシリーズの第1回目です。まずは「なぜ感情がわからなくなるのか」を、わかりやすく整理していきます。
この記事でわかること
- 感情がわからない・何も感じない状態が起きる理由
- 身体反応と感情の関係(体は反応するのに感情がわからない理由)
- 不安だけが強く残る仕組み
- 「何も感じない」状態が異常ではない理由
- 次回以降のワークにつながる“感情の土台”の考え方
感情がわからない状態には幅があります
「感情がわからない」といっても、その状態は人によって大きく異なります。軽い戸惑いから、ほとんど何も感じられない感覚まで、グラデーションがあります。
比較的軽い状態
喜怒哀楽はあるものの、うまく言葉にできず「モヤモヤする」「なんとなく疲れた」といった表現で止まる状態です。感情表現を学ぶ機会が少なかった人や、内向的・繊細な気質の人にもよく見られます。
一時的に鈍くなっている状態
強いストレスや疲労が続くと、喜びや悲しみを感じにくくなり、気持ちが平坦に感じられることがあります。これは心が弱いからではなく、これ以上消耗しないための自然な防御反応です。
感情そのものが湧きにくい状態
長期間、安心できない状況が続くと、感情がほとんど動かず、空っぽに感じることがあります。これは「感じていない」のではなく、心が守りに入っている状態です。脳や神経の防御反応として起こることが知られています。
なぜ感情がわからなくなるのか|感情が鈍くなる原因
感情がわからなくなる背景には、いくつかの共通した要因があります。
- 子どもの頃、感情を表すことを否定された・受け止めてもらえなかった
- 周囲を優先する役割を担い、自分の気持ちを後回しにしてきた
- 我慢することが当たり前の環境に長く身を置いていた
- 緊張や不安が続き、心が休まる時間が少なかった
こうした経験の中で、「感じないほうが安全」「気づかないほうが楽」という反応が、無意識のうちに身についていくことがあります。
身体は反応しているのに、なぜ感情がわからないのか
感情は「身体反応 → 意味づけ」という2段階で成立します。心拍が上がる、体が固まる、胃が重くなるといった身体反応が先に起き、その後に「これは不安だ」「これは怒りだ」と理解されます。
しかし、強いストレスが続くと、この“意味づけ”の回路が弱まり、身体は反応しているのに感情として認識できなくなります。これが「感情がわからない」「何も感じない」と感じる正体です。
不安だけが強く残るのはなぜ?
感情が鈍くなっている人の中には、喜びや悲しみは感じにくいのに、不安だけは強く残るというケースがあります。不安は「危険を察知するための最優先の感情」であり、脳の仕組み上もっとも残りやすい反応だからです。
脳の扁桃体は危険を素早く察知する役割を持っており、ストレス下ではこの回路だけが過敏に働きやすくなります。そのため、「感情がない」のではなく、一部の感情だけが前に出ている状態と言えます。
「何も感じない」は異常ではありません
感情がわからない状態は、あなたがこれまで生き延びるために身につけてきた自然な反応です。感情が鈍くなるのは異常ではなく、心と体があなたを守ろうとしているサインでもあります。
相談の場でも、「つらい出来事があったのに、悲しいのかどうかもわからない」「しんどさが全部、体の症状として出てしまう」という声はとても多いです。深刻なケースほど、感情のキャパオーバーに気づかないまま、体のだるさや痛みだけが前に出ることがあります。
本当に苦しくなるのは、感情がないことそのものではなく、「自分の内側で何が起きているのかわからない」ことです。このシリーズでは、感情を無理に引き出すのではなく、まずは“気づける心の土台”を整える視点をお伝えしていきます。
次回予告:感情には、思っている以上に多くの名前があります
「感情」と聞くと、喜怒哀楽だけを思い浮かべる人も多いかもしれません。ですが実際には、もっと細やかで、名前を持たない感情がたくさん存在します。
シリーズでは、感情の種類やグラデーションを知ることで、「何も感じていないと思っていた自分」に、実は多くの感情があったことに気づくための視点や、やさしいステップを紹介します。
少しずつ、自分の内側で起きていることに気づいていくための歩みを、一緒に進めていきましょう。
今後の公開予定
- 第1回:何も感じない・感情がわからないのはなぜ?(本記事)
- 第2回:こんなに多様な感情がある|名前を持たない感情たち
- 第3回:感情と体・神経のつながりを知ってストレスに強くなる
- 第4回:感情とつき合うためのセルフケアとセルフワーク

コメント