「些細なことで不安になる」「人間関係がぎこちない」「感情の起伏を感じにくい」――そんな違和感は、過去の体験で神経系が“圧倒された”サインかもしれません。
本記事では、現代のトラウマ理解とセルフチェックを通して、心と神経系を見つめ直すヒントをお届けします。
▶ トラウマ回復シリーズ(全4回)後日公開予定
- 第2回:トラウマが及ぼす人間関係への影響(愛着スタイルの歪み)
- 第3回:心の傷が身体に及ぼす影響と慢性不調
- 第4回:神経系の回復と認知の再構築
トラウマとは ― 出来事よりも「反応」に焦点をあてて
かつてトラウマは、戦争・事故・暴力など「極端な出来事」によって起こる特別な反応と考えられていました。
しかし現在では、「何が起きたか」よりも「それにどう反応したか」が鍵とされています。
「トラウマとは出来事ではなく、神経系が圧倒された反応の記憶である」
時代によるトラウマ理解の変化
| 時代 | 理解の焦点 |
|---|---|
| 過去 | 戦争・事故・暴力など極端な出来事 |
| 現代 | 圧倒される刺激+支えの欠如+持続的ストレス=神経系の反応として理解 |
現代心理学では、次の3要素が重なるとトラウマ反応が起こりやすいと考えられています。
抱えきれない体験 × 支えの欠如 × 長期ストレス
親の反応と神経系の学習
子どもは、親の表情・声のトーン・態度から「感情を扱う方法」を学びます。
親が感情を整理し落ち着きを示すことで、子どもは「安心→整理→回復」の流れを神経系に学習します。
逆に、怒りや不安をそのまま表す環境では、感情処理の方法を学べず、神経系が過敏に反応しやすくなります。
胎児期・乳幼児期と神経系の発達
母体のストレスホルモン(コルチゾールなど)は胎児の神経発達に影響を与えるとされています。
乳幼児期に「安心して甘えられる環境」がないと、神経系は「世界は危険」と学び、過剰警戒が習慣化します。
トラウマ傾向セルフチェック
以下の項目にいくつ当てはまるか確認してみましょう。(医療診断ではなく、自己理解の参考です)
- 過去を思い出すと身体が緊張し、感情が揺さぶられる
- 常に周囲に気を張り、安心できる場所が見つからない
- 感情を感じるのが怖い、または感覚が鈍い
- 見捨てられ不安・支配される恐れが強い
- 自責思考が止まらず繰り返す
- 理由のない慢性疲労がある
- 感情を言葉にしにくく混乱しやすい
3つ以上当てはまる場合は、神経系のバランスを整えるサポートが有効です。専門家や信頼できる人との関係づくりを検討しましょう。
トラウマに関するよくあるQ&A
Q1:過去の出来事を思い出すだけでトラウマですか?
思い出すたびに身体が緊張したり、心がざわつく場合は、神経系がトラウマ反応を起こしている可能性があります。
Q2:トラウマは忘れれば治りますか?
いいえ、忘れることが目的ではありません。トラウマ記憶は脳の深部に保存され、時間が経っても自然に消えるわけではありません。
安心できる体験や関係性を通じて、その記憶は「危険なもの」ではなく「過去の出来事」として再統合されます。このプロセスは「メモリー・リコンソリデーション」と呼ばれます。
Q3:自分で治すことはできますか?
トラウマ反応が起きているとき、人はそれを落ち着かせる方法をまだ体験として学んでいないことがあります。専門家のサポートにより、神経系は少しずつ「安心感のある反応」を再学習できます。
共鳴する神経系 ― コ・レギュレーションとは?
人の神経系は、他者の神経系と“共鳴”する性質を持っています。
この相互作用は「コ・レギュレーション(共同調整)」と呼ばれ、信頼できる人との関わりの中で、神経系が「安心してよい」という感覚を再学習します。
“Co-regulation is the foundation of feeling safe; safety emerges through connection.”
(共調整こそ安全の基盤であり、安全はつながりを通して生まれる)
— Stephen W. Porges, The Polyvagal Theory
セラピストや支援者が自らの神経系を安定させることで、クライアントの神経系も安心へと導かれます。これは体感的な癒しであり、トラウマ回復の基盤となります。
おわりに:トラウマは「神経系の回復」から
トラウマは特別な人だけに起こるものではありません。誰にでも起こり得る神経系の反応であり、安心できる環境の中で自然に回復する力があります。
当サロンでの自律神経ケア
当サロンでは、自律神経の調整と「安心の再学習」をサポートしています。
安全な空間で神経系が穏やかに整うプロセスをお手伝いします。少しずつ「自分らしさ」を取り戻しましょう。

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