感情が感じにくい状態が長く続くと、なぜ身体の不調が出やすくなるのか。
この特別編では、股関節・膝・仙骨・腰の痛み、肩こりや胃の不調、めまい感など、感情の鈍麻と関連して現れやすい身体反応について扱います。
感情を無理に感じる必要はありません。ここでは、心理学・神経科学の一般的な知見をもとに、心と体のつながりを責めない視点で整理していきます。
この記事でわかること
- 感情が鈍いと身体に不調が出やすい理由
- 股関節・仙骨・腰・胃などに症状が出る仕組み
- 神経系の防御モードと身体反応の関係
- 不調を和らげるセルフケアの方法
「感情を感じられない自分」を責めてしまうあなたへ
「『感情を感じましょう』と言われるたびに、無理やり怒りを絞り出してきました。
でも、その後に襲ってくるのは、動けなくなるほどの激しいだるさと落ち込みなんです……」
日々身体の不調と向き合う中で、こうした切実な声をよく耳にします。
もし今、あなたも「感情を感じられない自分はダメだ」と自分を責めているのなら、
まずはこうお伝えしたいのです。
もし、あなたが今すぐ感情を感じられる状態にあるのなら、
あなたはすでにそうしているはずです。
あなたが感情を閉じ込めているのには、
必ず「そうせざるを得なかった理由」があります。
かつてのあなたにとって、感情を遮断することは、
自分を守り抜くための生存戦略だったはずです。
感情を取り戻すプロセスは、自転車の練習に似ています。
いきなり全力疾走しようとすれば、
転んで怪我をしてしまうのは当然です。
この記事で、まず「感じられない自分」を理解するお手伝いができればうれしいです。
※この記事では、なぜ身体があなたを守ろうとして不調を出しているのか、
その仕組みを紐解いていきます。
第1回目の記事はこちらから:何も感じない・感情がわからないのはなぜ?

感情が感じにくい人に多く見られる身体の不調
感情がわからない状態が続くと、次のような身体症状を訴える方が少なくありません。
- 股関節・膝・仙骨の痛みや違和感
- 腰痛や腰まわりの重さ
- ツボ(圧痛点)に強い痛みを感じやすい
- 肩こり・首こり、緊張性の頭痛
- 胃痛、胃の重さ、不快感
- だるさ、強い眠気
- 呼吸が浅く、息苦しさを感じる
- めまい感、ふわふわする感じ、立ちくらみのような感覚
これらは医学的な診断ではなく、心身の反応としてよく見られる傾向です。
※本記事の内容は医療行為や診断を目的としたものではなく、心理学・神経系の一般的な理解に基づいた説明です。
感情の鈍麻が身体の痛みとして現れる仕組み
感情を感じないと、身体が代わりに反応する
感情が鈍くなっているときでも、身体の内側ではストレス反応が起きています。
ただし、そのストレスを感情として自覚できないため、身体が代わりにサインを出すことがあります。
- 眠気やだるさ
- 頭痛や肩・首のこり
- 胃の不調
- 股関節や仙骨・腰まわりの痛み
- ふわっとする感覚や安定感の低下
原因がはっきりしない不調が続く場合、このようなパターンが関係していることもあります。
あわせて読みたい:原因不明の痛みに関する記事

防御モードと身体の痛み(股関節・仙骨・腰・肩・胃)との関係
感情を抑え込む状態が続くと、身体は無意識のうちに防御モードに入りやすくなります。
- 交感神経が優位になる
- 呼吸が浅くなる
- 筋肉や筋膜が緊張する
- 血流が低下しやすくなる
- 体幹の深部筋(多裂筋・腸腰筋)が硬くなる
- 身体が「守りの姿勢」を固定しやすくなる
- 内臓の動きが鈍くなり、胃まわりの不調が出やすくなる
- 痛みの感受性が高まり、小さな刺激でも痛みを感じやすくなる
この状態が慢性化すると、姿勢を支える部位や身体の中心に近い場所に負荷が集中します。
特に違和感や痛みが出やすい部位として、肩・首・背中、腰、股関節・仙骨、膝、胃まわりなどが挙げられます。
股関節や仙骨に現れる「守りのサイン」
股関節や仙骨まわりに現れる違和感には、身体が無意識に守ろうとしてきた歴史が反映されていることがあります。
【コラム】股関節に眠る「言葉になる前の身体の訴え」
セッションで多くの方の股関節にそっと手を置くと、言葉になる前の、防御的な緊張や違和感が長く留まっているように感じることがあります。
例えば、言葉を持たない赤ちゃんの頃。繊細な感覚を持った子ほど、おむつの汚れや、交換時の無機質な手の感触に、言いようのない拒絶感を感じていたかもしれません。そのとき、小さな身体が自分を守るためにキュッと力を込めた場所——それが股関節や下腹部だったのではないか、とふと感じるときが幾度かありました。
下腹部は、私たちの生命力やセクシャリティ、そして生々しい感情が渦巻く場所でもあります。ここに緊張を走らせることは、いわば「感情の蛇口」を根元から締め切るようなものです。
感情が溢れ出さないように、そして外からの刺激を入れないように、股関節を固く閉ざしてしまう。その結果、循環が滞り、痛みや違和感としてサインを出している……。今感じている股関節の痛みは、あなたがかつて自分を守るための習慣が過度に強まったための痛みなのかもしれません。
感情が鈍いと身体感覚が過敏になる理由
感情が感じにくい状態では、脳の注意の向きが変化します。
- 感情への注意が弱まり
- 身体感覚への注意が強まる
その結果、普段なら気にならない違和感が、痛みや不快感として強く知覚されることがあります。
股関節や仙骨、膝といった深部感覚や、ふらつき感・めまい感が過敏になるケースもあります。
身体のサインを危険として扱いやすくなる
感情が閉じている状態は、脳が「今は感情を感じると危険」と判断しているときにも起こります。
その結果、身体からの小さな信号を過剰に警戒し、胃の不快感、肩こりの慢性化、股関節や仙骨の痛み、めまいのような感覚が長引くことがあります。
これは脳の予測モデルが防御寄りに傾いているために起こる現象と考えられています。
内受容感覚のバランスが崩れる
内受容感覚とは、身体の内側の状態を感じ取る力のことです。
感情が鈍くなっている人では、感情に関する内受容感覚が低下し、身体感覚が過敏になるというアンバランスが起きることがあります。
その結果、胃痛、胸の圧迫感、股関節や仙骨の違和感、ツボの痛み、呼吸のしづらさ、めまい感などが強く感じられる場合があります。
ツボ(圧痛点)の強い痛みが起きやすい背景
圧痛点の強い痛みは、局所の異常というよりも、
神経系が過敏になっている状態の表れとして説明されることがあります。
特に影響が大きいのは、
- 幼少期から感情を抑える必要があった
- 感じると困る環境が長く続いた
- 「感じないこと」が生存戦略として固定された
このような経験によって、神経系が慢性的な防御モードに適応すると、
- 自律神経のベースラインが緊張寄りになる
- 身体の防御反応が解除されにくくなる
- 感情の処理が身体感覚のほうに押し出される
その結果、筋膜や結合組織、神経終末が過敏になり、
軽い刺激でも強い痛みとして感じられることがあります。
感情の鈍麻と身体の痛みは、切り離せない関係にあります
感情が感じにくい状態では、感情処理がうまく働きにくくなり、身体感覚への注意が強まり、自律神経が緊張しやすくなります。
その結果、身体の信号を危険として扱いやすくなり、股関節・膝・仙骨・腰・肩・胃などに不調が出やすくなることがあります。
感情の鈍麻による身体の不調を和らげるための視点
呼吸を整え、自律神経の緊張をゆるめる
- 息を吐く時間を少し長くする
- 胸ではなく背中側が広がる呼吸を意識する
- 短時間でも、1日数回行う
呼吸が整うと、筋肉の緊張が自然にゆるみ、痛みやだるさが軽減しやすくなります。
身体の感覚を安全に感じる練習
- 足裏が床についている感覚
- 座面に体重が乗っている感覚
- 温度や触感をゆっくり味わう
感じても大丈夫、という経験を少しずつ積み重ねていくことが大切です。
【コラム】「地に足がつかない」という感覚の正体
内的世界観や精神性を大切にされている方ほど、実は「足の裏の感覚」を感じることが苦手なケースが多く見受けられます。
それは、決して身体が鈍感なのではありません。むしろ、その逆です。感情があまりに繊細で豊かなために、それらをすべて真正面から受け止めてしまうと、心が圧倒され、バランスを崩してしまう。それを防ぐために、無意識のうちに意識を身体から切り離し、静かな精神世界へと避難させている状態なのかもしれません。
セッションで身体の感覚を丁寧に取り戻していくプロセスでは、一時的に神経が過敏になり、それが「不安」や「落ち着かなさ」として現れることもあります。しかし、これは今まで閉じていたセンサーが正常に動き始めた大切な兆しです。
少しずつ心の重荷を降ろしていくと、身体は「もう、どこかへ逃げなくても大丈夫だ」と理解し始めます。そのとき、足の裏は単なる皮膚の感覚を超えて、大地に支えられているという深い安心感を私たちに教えてくれるようになります。
筋膜や関節まわりの緊張をゆるめる
- 肩・首
- 背中
- 股関節
- 仙骨まわり
- 膝周辺
軽いストレッチや温めるケアでも、身体は反応しやすくなります。
感情を言葉にしなくても外に出す
- 深呼吸
- ため息
- 軽い運動
- ゆっくり歩く
- 身体を温める
感情が動きやすい土台が整い、身体症状が落ち着きやすくなります。
身体の中心部を温める
- お腹
- 仙骨
- 股関節まわり
身体の中心を温めることで、自律神経が整いやすくなり、安心感が高まりやすくなります。
第4回目:感情とつき合うためのセルフケアとセルフワークの記事はこちら

身体と感覚に、少しずつ起きてくる変化
以下は、セッションを重ねる中で、
実際に多くの方に見られる変化の一例です。
いずれも、感情を無理に掘り下げたり、
頑張って変わろうとしなくても、
神経系が落ち着いてくる中で自然に起きてくるものです。
セッションを重ねていくと、自分が何にストレスを感じていたのかに、少しずつ気づけるようになる方が多くいらっしゃいます。
それに伴い、セルフケアも正解を探すものではなく、今の自分に必要な視点として理解できるようになるケースが見られます。
また、ここにいる感じが弱く、足が地についていないように感じていた状態から、体の位置や動きが把握しやすくなり、体を動かしたくなったり、散歩中の自然を以前より美しく感じられるようになることもあります。
こうした変化の中で、痛みやめまい感とストレスの関係が、自分の感覚として理解できるようになる方も少なくありません。
第3回目:なぜ他の感情は感じないのに「不安だけ残る」のか

専門的なサポートという選択肢
身体の不調が長く続く場合、セルフケアだけでは難しいこともあります。
当サロンでは、「なぜこの身体反応が必要だったのか」を、
その方の人生全体の文脈として丁寧に読み解くことを大切にしています。
神経系の過活動を静め、身体が今は安全だと感じられる状態を整えもう手放して大丈夫だと体から理解するサポートをします。
また、筋肉や関節だけでなく、身体全体のまとまりや流れを、エネルギーの偏りや歪みとして捉える視点も取り入れながら、無理のない形で調整を行っています。
感情を無理に感じさせることはせず、その人の神経系のペースを尊重しながら関わることを基本方針としています。
この記事のまとめ
感情が感じにくい状態が続くと、身体はその負荷を代わりに引き受け、股関節・仙骨・膝・腰・肩・胃などに不調として現れることがあります。
身体の不調は、決して弱さの証拠ではありません。
それは、あなたがこれまでの人生の中で、
壊れないように、感じすぎないように、
身体を使って踏ん張り続けてきた結果でもあります。
私はこれを、
あなたという存在全体が、気づかないところで続けてきた
とても静かな「献身」だと感じています。
感情の鈍麻は、神経系が「今は感じると危険」と判断しているときに起こりやすく、身体感覚が過敏になったり、痛みやめまい感が強く出たりすることがあります。こうした反応は、あなたの身体が必死にバランスを取ろうとしているサインでもあります。
呼吸を整えることや、足裏・座面の感覚をゆっくり味わうこと、身体を温めることなど、小さなセルフケアでも神経系は少しずつ落ち着きを取り戻します。感情を無理に感じようとする必要はなく、まずは「今の自分にとって安全な範囲」で身体を整えていくことが大切です。
身体の不調は、あなたがこれまで生き延びるために身につけてきた知恵の名残でもあります。焦らず、責めず、少しずつ。あなたのペースで大丈夫です。
一人で抱え込まないこと
感情が鈍くなっているときほど、自分でなんとかしようと頑張りすぎてしまうことがあります。
身体症状が出ているときは、誰かのサポートを受けることで、回復が進みやすくなる場合もあります。
今の自分にとって無理のない選択肢を持っておくことも、大切なセルフケアの一つです。

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